小室圭氏ー米国ロースクール留学の夢と現実

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Library | Harvard Law School出典

 

こんにちは、米国の公共政策大学院で学んでいる運知万です。

 

目次

 

はじめに

 

最近ニュースで、秋篠宮家の眞子さまの婚約者である小室圭氏の米国フォーダム大学(英: Fordham University)ロースクール留学が決まったことが報じられました。いろんなメディアの報道や口コミに正しくない情報や偏った意見を多く見かけるので、私の経験がネット上の情報を別な観点から吟味する一助になれたらと思い、私の考えも書いてみようと思います。はじめに米国ロースクール留学の概要、わたしが推測する小室圭氏のキャリアプラン、そして乗り越えるべき壁についてを書きます。

 

米国ロースクール留学の概要

 

米国のロースクールには大きく3つのコースがあります。1)法務博士(Juris DoctorまたはJ.D.)、2)法学修士(Master of LawまたはLL.M)、そして3)法学博士(Doctor of Juridical ScienceまたはS.J.D)があります。

米国の大学生が学部を卒業後、弁護士になるために行くコースは法務博士(以下J.D.)のコースになります。

J.D.は3年間のコースで、各州で定められた司法試験(Bar Exam)を受けて、合格して初めて弁護士になることができます。例えばニューヨーク州のBar Examに合格すれば、ニューヨーク州の弁護士になることができます。

J.D.に入るためには、学部のGPA、LSATと呼ばれる米国の法科大学院適性試験、教授や上司からの推薦状を2~3本、そして志望動機を含むエッセイを提出し、総合して判断されます。

LSATは、論理(Logical Reasoning)、数的分析(Analytical Reasoning)、読解の(Reading comprehension)3分野に加え、ライティングが出題されます。

 

ハーバード・ロースクールを含めた米国トップ10のロースクールに入るためには180点中170点以上必要だとされています。ただし、LSATの点数だけで合否が決まるわけではないので、LSATの点数は合格を保証するものではありません。

米国トップ20のロースクールには165点以上、米国トップ50のロースクールには160点以上必要です。

2017年の小室氏の留学先であるフォーダム大学ロースクールのクラス統計によると、合格者のうち下位25%から上位75%は160点から164点の間の点数を取得しています。以下のクラス統計を参照しています。

www.fordham.edu

 

このLSATは米国の優秀な大学生が受ける試験なので、留学生にはとても難しい試験となっています。私もLSATを受験したことがありましたが、TOEIC950点やTOEFL iBTで100点以上取っていますが、歯が立ちませんでした。TOEICやTOEFLは外国人向けに作られている英語の試験ですが、LSATは英語ネイティブの方に作られている試験という事実に起因しています。

 

海外から米国に法律を学びに来る場合は主に法学修士(LL.M)のコースで学びます。こちらは1年間です。J.D.取得後、特許法など特殊な法律に関わる方がLL.Mを取得する場合もあります。このコースに在籍する留学生は、自国で弁護士資格を取得していたり、学部時代法律を専攻していて米国の法律または比較研究をしたい場合にこのコースに進学します。LL.Mを受験するには、LSATは不要でTOEFL、推薦状、そしてエッセイで出願できます。なので、外国からの留学生にも入りやすい制度になっています。州によってはLL.Mを修了することで米国の司法試験の受験資格を満たせる場合もあります。ただし、米国の司法試験もかなり難易度が高いので、一年のロースクール留学の勉強のみでの合格は不可能じゃないにしろ難しいです。もちろん合格されている方もいらっしゃいます。

 

最後に法学博士(S.J.D.)のコースがあります。こちらは博士課程のプログラムですので、卒業に4年から5年かかります。このコースに在籍する方は学術の分野で活躍される方がほとんどです。卒業後は、大学の法学部やロースクールを含めた大学院で教鞭を取ります。

 

推測される小室圭氏のキャリアプラン

目標はもちろん米国のロースクールを修了し、米国の弁護士資格を取得することです。

小室氏は奥野総合法律事務所でパラリーガルとして勤務しながら、一橋大学大学院国際企業研究科の経営法務コースに在籍されていました。アメリカではパラリーガルとして経験を積んだのち、ロースクールに行くというのは一般的なキャリアとなっています。

ロースクールの学費は高額なので、ほとんどが学生ローンを利用します。

ただし、卒業後の年収が高いので、返済可能なのを見越して進学します。

たとえば、今回小室氏が留学するフォーダムロースクールの卒業初年度の平均年収は160,590ドルになっています。現在の円の為替レート(2018年7月7日)は1ドル110.46円となっていますので、円換算すると年収が約1,774万円になります。

news.law.fordham.edu

 

フォーダム大学によると、小室氏は学費免除返済不要の奨学金を取得し、1年間のLL.Mのコースに進学されるそうです。その後、2年目と3年目はJ.D.のコースに編入する計画との発表がありました。

news.law.fordham.edu

一般的には学部時代に法学部を卒業していないとLL.Mのコースには進めませんが、一橋大学大学院で経営法務を専攻されていたので、進学可能だったのかもしれません。そのために一橋大学大学院で学ばれていたのかもしれません。

LL.MからJ.D.への編入の難関はLSATだと思います。小室氏は現在はJ.D.に入る英語力を満たせていないためLL.Mに進学されたのだと思いますが、1年の留学で英語力を上げ、LSATを攻略されることを見越しておられるのかもしれません。

小室氏は3年間でJ.D.を取得し、奥野総合法律事務所で米国の弁護士として活躍される計画を立てられているようです。その際は、パラリーガルではなく、弁護士ですので、高収入も見込めると思います。

乗り越えるべき壁

今回の留学を成功させるためには、いくつか乗り越えるべき壁があります。大学から奨学金を受けたり、勤務されている法律事務所から支援を受けるなどして高額な学費を工面するという最難関の壁はクリアできていますので、それ以外の点をまとめたいと思います。

1)米国法科大学院適性試験のLSAT

LL.MからJ.D.に編入するにあたって、LSATを攻略することが最優先事項となります。試験ですので、英語力を上げる必要もありますが、コツを知ることも重要です。アメリカにもLSAT対策予備校などありますが、ほとんどのアメリカ人は数的分析の分野が苦手なので、自然と対策の比重が数的分析になります。日本人の課題は論理(Logical Reasoning)と読解(Reading Comprehension)です。日本でLSAT対策をしている予備校はほとんどありませんので、論理(Logical Reasoning)と読解(Reading Comprehension)はGMATを教えている予備校を利用するものありかもしれません。

 

2)ロースクールの授業

米国のロースクールの授業はハードです。ロースクールについてアメリカでは

 

First year, they scare you to death. Second year, they work you to death. Third year, they bore you to death.

 

 「一年目は死ぬほど恐ろしく、二年目は死ぬほど忙しく、三年目は死ぬほど退屈だ」と言われています。ロースクールではソクラテスメソッドやケーススタディが使われます。ビジネススクールでのケーススタディはもともとロースクールに由来しています。

ビジネススクールでは出席、課題、グループワーク、試験、クラスでの貢献度など総合的に成績をつけられますが、ロースクールは最後の期末試験一発勝負だったりするようです。どちらがハードか甲乙はつけ難いですが、大変なことには変わりありません。大学院に入ってしまえば、なんとかなるというのがわたしの実感です。

 

3)米国の司法試験(Bar Exam)

 米国の司法試験に合格することはロースクールに入学するよりも大変です。ロースクール3年次に司法試験の準備をします。年2回、2月と7月に受験することができます。BARBRIなどの教材が有名です。

 

以上、乗り越えるべき壁について書きましたが、相当なプレッシャーだと思います。まずはJ.D.のコースに入らないことには始まりませんので、この一年が勝負になると思います。